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5.地球温暖化防止のために原子力発電は有効か

二酸化炭素排出と放射性物質排出

5−1図 各種電源別のCO排出量 『図面集2001』から引用
5−2図 発電方式による廃棄物排出量の違い
『人は100Wで生きられる』から引用

 5−1図は燃料から地球温暖化を起こす二酸化炭素を出す火力発電(左4つ)とそれ以外とを区別して、原子力発電が地球温暖化防止に役立つとアピールしています。これが「原子力ルネサンス」(低迷してきた原子力の復権)のためのきっかけにされてきました。右の5つの中では原子力だけが「再生不可能エネルギー」になります。ここでは「再生可能エネルギー」が地球温暖化防止に役立つことを確認しておきましょう。意図的に除外したとは思われませんが、この図で「バイオマス」が抜けています。これは炭酸ガスの排出と吸収が相殺します。これも再生可能エネルギーに含まれます。二酸化炭素排出削減という観点で原子力発電は勝ち組に入ります。

 5−2図は二酸化炭素だけでなく放射性廃棄物も合わせて表示しています。放射性廃棄物生成削減という観点では原子力発電の一人負けになります。あなたは地球温暖化と放射能汚染のどちらを選びますか。

原子力が地球温暖化防止にどの程度役立つかを以下に見ていきます。


意外に少ないウラニウム資源

5−3図 1999年末のエネルギー資源確認埋蔵量 『図面集2001』から引用

 5−3図はそれぞれの資源が1999年末の使われ方で、その後何年間資源を利用できるかという「可採年数」を示します。電力業界や政府は原子力資源としてのウラニウムの量がこのように少ないことをよく知った上で、さらに社会によく周知させた上で、原子力発電を推進してきたのでしょうか。電力業界は自作の資料にある情報ですから当然知っているでしょう。長期的展望をよりも当面の利益を追求する立場からはこのことを国民に知られない方が好都合です。また政治家は原子力資源が限られていることについて不勉強であることを認識すべきです。電力業界も政府も原子力資源の状況を国民に周知させるどころか、逆に資源量に対する根拠のない幻想を広めるてきました。プルサーマル運転をしても1.5倍(無限回繰り返しても2倍)にしかなりませんので、状況が変化しなければウラニウムは21世紀中に採れなくなります。むしろ石炭の方が先まで利用できます。

5−4図 2008年末でのエネルギー資源埋蔵量 『図面集2011』から引用

 5−4図は9年経過した新しい「可採年数」を示します。第23図と比べて可採年数が全体で約10年分減るのではなく意外な増減をしていることが読み取れます。1999年版で長かった石炭の可採年数が大幅に減り、ウラニウムが増加しています。石炭資源を半分近くも使いきったり、ウラニウムの大規模な鉱脈が発見されたりしたわけではありません。火力発電で石油の使用を減らし、石炭を増やしたことにより、石炭の年間使用量が増えたために石炭の残り時間が極端に減ったのです。一方ウラニウムは価格が上昇したために、これまで捨てていた低品質のものや劣化ウラニウムまで利用することになりました。濃縮効率が低下して工程が延びるので、濃縮ウラニウムの価格はウラニウム原料価格の上昇よりも大きく上がります。このような操作でウラニウムの可採年数を伸ばしました。

 どちらのデータを見ても、化石燃料ばかりでなくウラニウムも実質的に21世紀で枯渇することが分かります。

5−5図 一次エネルギーの内訳 『図面集2011』から引用

 地球温暖化防止のために全ての火力の一次エネルギーを停止し、そのエネルギーを原子力発電で賄ったらどうなるかを考えましょう。5−5図の右端にある利用内訳を読み取ります。下からの石油、天然ガス、石炭で全体の88.0%を占めます。これを5.5%である原子力で賄うと原子力の年間発電量を16倍に引き上げる必要があります。元のままで100年もつものを16倍のペースで使ったら6年しか持たないことは簡単に分かります。

 再生可能エネルギーを増やさない場合、石油や天然ガスの枯渇後は、石炭と原子力で負担する必要があります。5−4図と5−5図の数値を使うと、原子力を現在の1.33倍、石炭を1.63倍、天然ガスを0.80倍、石油を0.55倍のペースで消費すると75年後に4つの資源が同時に無くなることが分かります。

 このように地球温暖化を無視して火力エネルギー利用と原子力利用を最も長く共存させてもウラニウムは75年でなくなり、地球温暖化防止のために火力エネルギーの全部を原子力で肩代わりをすると6年でウラニウムを使い尽くすことになります。いずれにしても21世紀中に化石エネルギーも原子力エネルギーも枯渇します。これでは原子力が地球温暖化対策の主役でなく、ショートリリーフに過ぎないことは明らかです。地球温暖化対策での原子力への過大な期待は何処から来たのでしょうか。その期待の根拠と思われる事項を次のページで検討しましょう。


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