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4.本当に原子力発電の経費は火力発電より安いのか

発電単価で原子力が火力より安いとする計算

 原子力発電が火力発電より有利なのは燃料費の安さだけです。天然ウラニウムは1キロ2000円程度です。これが化石燃料100トン相当の熱エネルギーを発生するので、桁違いに安価な燃料費になります。

 原子力発電は燃料費が安い代わりに原子炉等の設備費が高いことが難点です。従って稼働率が高ければ高いほど、発電単価が下がります。稼働率を上げるために事故が起こっても隠してしまおうとする動機が働きます。実際に事故隠しが頻発しています。

4−1図 電源別発電コスト 『図面集2011』から引用

 4−1図の左側の部分で運転年数を法定耐用年数(減価償却の年数)で計算すると原子力は石炭火力、LNG火力より単価が高くなることを示しています(水色の棒グラフ)。原子力発電は火力発電と比べて設備費の割合が高く、燃料費の割合が低いので、電力業界は運転年数を40年に延ばして原子力発電が安くなるようにしています(ピンクの棒グラフ)。単価計算には原子力発電の稼働率が70%程度だったのを一時的に80%まで上昇した実績に合わせて80%としたことも反映されています。以下にこれらの問題を議論しますが、ここでは耐用年数延長と稼働率の問題をかかえることによって原子力発電の発電単価での火力発電に対するぎりぎりの優位性を作り上げたことを確認しておいてください。

実態に合わない稼働率

4−2図 原子力発電の国別稼働率 『図面集2014』から引用

 4−2図をよく見ると日本の原子力発電の稼働率は1995〜2002年に80%を維持していましたが、2003年以後2011年の東日本大震災が起こるまでの間は65%程度を低迷していることが読み取れます。図の5カ国で最低水準に陥っています。2002年の落ち込みは福島第一原発、福島第二原発、柏崎刈羽原発の東京電力の炉心隔壁損傷データ改竄と事故隠しが原因です。2008年の落ち込みは同じく東京電力柏崎刈羽原発が中越沖地震で原子炉建屋が傾き、火災も起こす被害を受けたことによるものですが、中越沖地震のように中規模に過ぎない地震でこの有様ではあきれるばかりです。これが「世界最高水準」を謳う日本の原子力発電技術の実態です。根拠もなく最高水準を名乗ることは根拠もなく安全神話を押し付けることと通じるものがあります。

 この最低水準の稼働率のために日本の原子力発電経費は火力発電より高くなったはずですが、2011年版でも80%の稼働率による発電単価のままです。東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故等のために2011年には稼働率が急降下していますので、原子力の発電経費での見せ掛けの優位性は完全に破綻しています。その後も殆どの原発が停止していることによる発電単価の暴騰を公正に評価して、不都合であっても現実に即した単価を表示すべきです。『図面集2013年版』では4-1図に相当する図が削除されています。原発が再稼動され、稼働率が80%まで回復してから発電単価を表示するのでしょうか。

4−3図 『朝日』2011年9月14日号から引用

 9月13日、電力業界が改定しないうちに原子力委員会に新しい試算が4−3図のように報告されました。稼動率の見直しだけでも原子力発電経費は火力発電経費より安くはないことになります。

火力に不要で原発に必要な経費を比較から除いている

 上の比較は設備費、燃料費、人件費など、他の発電と共通に必要な経費だけでの比較になっていることに注意する必要があります。問題は以下の原子力発電固有の膨大な必要経費の準備を不十分にしか積み立てていないばかりでなく、発電経費から除外されていることです。原子炉の安全対策費が膨大であるために「想定外」として安全対策を怠ったことと同じことが経費算出でも行われていることに注目してください。下の5項目についても正当に評価して発電経費に加えるべきです。2011年10月以後、政府機関での試算が公表されたり、国会で電力会社の積立金の額が明らかにされてきています。朝日新聞11月23日号では初めの2項目を考慮すると4割増しの経費になるという独自の計算をしています。

 原子力発電固有の経費を除外しても、原子力発電が火力発電よりもかかるうえに、これらの原子力発電の膨大な固有経費を加算すると原子力発電の経費が火力発電よりも大幅に高くなることは明らかです。安くなるように安全対策の手抜きをしたことの「つけ」が今回の東電福島第一原子力発電所の重大事故にまわってきたに過ぎません。安全性を犠牲にした「安価な原発」に騙されて第2、第3のフクシマを引き起こさせてはなりません。

 2016年8月23日、内閣府の専門部会で原子力発電所事故の賠償制度の見直しに関する中間報告をまとめました。これまでは事故を起こした電力会社に金額の制限なく賠償を負わせる「無限責任制」から賠償負担を有限に限定する「有限責任制」に緩和するかどうかの議論が行われ結論を出していません。有限責任の場合には税金として負担が国民に押し付けられます。「安価」を謳うなら堂々と無限責任を負うべきです。

 経済性が悪くても原子力開発を追求する理由としては核兵器開発の意図があるとしか考えられません。このことについては 「8.原子力発電は核兵器廃絶を妨げている」をご覧ください。


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