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第6章 原子核の集団運動

原子核の集団運動

 殻模型では魔法数(閉殻)付近の核について特に成功している。魔法数から遠い核では最外殻に入っている核子数が多くなり、それらの集団運動が顕著になる。ここでは代表的な集団運動として回転模型と振動模型を取り上げる。

回転模型

 閉殻から遠い核では球対称からずれた形に変形しているものがある。変形領域は

155 < A <185
225 < A
が知られている。変形の表現法の1つとして核表面を以下のように表す。
R(θ) = R0[ 1 + βY20(θ) ]
βは変形パラメータの1つである。

 回転状態のエネルギー準位は古典力学的な回転の運動エネルギーとして表現できる。角運動量を Ih(bar), 慣性モーメントを J とすると、励起エネルギー E は

E = EK + h(bar)2I(I+1)/2J
で与えられる。ここで EK は回転を含まない内部エネルギーである。

 Iπ = 0+, 2+, 4+, 6+, ... の「回転帯」では EK = 0 となり、以下の特徴的な励起準位エネルギー比が得られる。

E(4+)/E(2+) = 10/3
E(6+)/E(2+) = 7
E(8+)/E(2+) = 12

 上述の変形領域の核でこの関係が満たされていることが下の図で理解できる。

 また電気四重極モーメントは殻構造から得られる値より大きい。このため、同じ「回転帯」内でのγ線放射転移の確率が大きい。この事情は端数の核子によるスピンが組合わさる分だけ複雑になるが、質量数が奇数の核でも同じ変形領域で観測されている。

 慣性能率は核を剛体として計算される値と、核を非圧縮・渦なし液体として計算される値との間に入る。

 このような回転状態で大きなスピンを持つ核として 152Dy が知られている。この核では I = 80 まで見つかっている。

振動模型

 陽子数、中性子数がともに偶数の中重核では、上の図でわかるように、第2励起状態と第1励起状態の励起エネルギー比が回転模型のように 3.33 にならずにむしろ 2.2 に近いものが見られる。これらの核は変形していないが、γ線遷移確率は1粒子の場合より10倍以上大きいので、回転とは違う種類の集団運動である。

 これは変形の様子が時間的に変化する振動運動と考えられている。核表面の形を

R(θ,φ) = R0[ 1 + ΣlΣmαlmYlm(θ,φ) ]
と表す。ここで l の和は 2 から(l = 1 は重心移動になるので除外)、m の和は -l から +l までである。ハミルトニアンは
H = ΣlΣm[(Bl/2)|∂αlm/∂t|2 + (Cl/2)|αlm|2 ]
と表せるので、ωl2 = Cl/Bl として
El = Σl(h/2π)ωl(nlm + 1/2 ) = (h/2π)ωl [ Nl +(2l + 1)/2 ]

N2IE
00+0
12+(h/2π)ω2
20+,2+,4+2(h/2π)ω2
30+,2+,4+,6+3(h/2π)ω2
が得られる。ここで Nl = Σmnlm である。[ ] の第2項は零点振動を与えるので共通のものとして除外する。l = 2 の4重極振動の場合、N2 = 0, 1, 2, ... の状態があり、N2 > 1 では複数の状態が同じエネルギーに縮退している。理想的な振動状態であれば、第2励起状態と第1励起状態のエネルギー比は 2 になるべきであるが、測定値は 2.2 になっている。

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