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原子核物理学(nuclear physics)

山形大学でのこの授業は終了していますので、大学内のサーバーからここに移動しました。

授業概要

 物質の性質は原子が決める。その原子の性質は軌道電子の数で決まる。 電子の数は原子核の中の陽子の数が決める。従って物質の性質を支配するのは 原子核である。複数の陽子と中性子との結合系である原子核は、陽子・中性子数の 任意の組み合わせに対して存在する訳ではない。安定な核種もあれば、不安定な ものもある。原子核の中で働く相互作用と核内粒子の運動を理解してはじめて 原子核の性質が説明できる。

内容

  1. 原子核の基本的性質
    1. 原子核の存在
    2. 原子核の構成
    3. 原子核の大きさ
    4. 原子核内で働く力
    5. 量子力学の必要性

  2. 原子核の質量
    1. 結合エネルギー
    2. 比結合エネルギー
    3. 核分裂と原子力エネルギー
    4. 核融合の利用
    5. 質量公式

  3. 原子核の安定性
    1. 原子核の崩壊
    2. α崩壊
    3. β崩壊
    4. 自発核分裂
    5. 重イオン崩壊
    6. 放射系列
    7. 核図表
    8. 放射性同位元素の例
    9. 年代測定への応用

  4. 重水素核の構造
    1. 2体系の運動
    2. 井戸型ポテンシャルでの重水素核

  5. 原子核の殻構造
    1. 原子の殻構造との違い
    2. 調和振動子模型による殻構造
    3. Woods-Saxon ポテンシャル
    4. スピン・軌道結合力
    5. 殻構造で説明できること

  6. 原子核の集団運動
    1. 回転模型
    2. 振動模型

  7. 核反応
    1. 核反応の運動学
    2. 断面積
    3. 核反応時間
    4. メスバワー効果

  8. 元素の進化
    1. 元素分布
    2. ビッグバン直後の元素合成
    3. HR図と星の進化
    4. 星の進化と核反応
    5. HR図上での進化(動画)
    6. 中性子吸収反応
    7. 中性子星までも含む詳細なHR図
    8. 太陽と地球の運命

試験問題と解説(2004年度分)

7月29日(木)に行った試験問題の解説をします。
  1. 波長が 10-15 m になるために電子(m = 9.1x10-31 kg)、陽子(m = 1.67X10-27 kg)の運動をそれぞれ何MeVまで加速する必要があるか。
  2. ここでは運動エネルギーを聞いています。静止質量エネルギーよりも大きいか大差のない答えになっているのに非相対論的な計算のままにした間違いがありました。

  3. 質量数27でβ崩壊に対して安定な原子核種の原子番号を核図表を使わず、計算によって求めよ。
  4. β安定線を与える式を使えば求められます。正解多数でした。

  5. 厚さ 1 mg/cm2 の炭素膜に強度1μAの陽子ビームを当てて核反応を起こし、10 cm 離れたところに 1 cm2 の検出器を置いて検出するときの計数率(計数/時間)を求めよ。ただし、反応の微分断面積を 1 mb/sr、検出効率を 100 %、アボガドロ数を 6.0x1023、陽子の電荷を 1.6x10-19 C とする。
  6. 薄幕の場合、密度が厚さによって変わりますので、標的核の個数を表現するために、厚さを長さで表現するよりも密度を長さに掛けた量で表現する方が便利です。正解1名でした。

成績分布

レポート等を含めた総合成績分布

  90〜    1
  80〜89  3
  70〜79  3
  60〜69  2
  0(放棄) 10
  合 計   19

試験問題と解説(2003年度分)

7月25日(金)に行った試験問題の解説をします。
  1. 結合エネルギーを与える公式を求めよ。

    定義式を書くだけでは不可です。ここでは結合エネルギーをZ,N,Aの関数で表すことを求めていました。「質量公式から結合エネルギー公式を作れる」と授業で話したことを思い出してください。正解者は2名だけでした。

  2. 天然のRIでβ-崩壊がβ+崩壊より多い理由を述べよ。

    「質量の大小関係から単独の中性子はβ-崩壊できて、単独の陽子はβ+崩壊できない」という解答は原子核の世界では通用しません。そのような解答ではβ+崩壊する核種が存在することを説明できません。β安定核よりも陽子過剰核ではβ+崩壊、中性子過剰核ではβ-崩壊が起こりやすいこと、β安定核であっても重い核ほど中性子過剰度が大きく、その核からのα崩壊娘核はβ安定核から中性子過剰側にずれやすいことを思い出してください。授業で出した「連鎖崩壊」のβ崩壊はすべてβ-崩壊でした。残念ながら正解者はいませんでした。

  3. 次の核の基底状態のスピンを求めよ。
     @136C,  A199F,  B2713Al,  C5726Fe,  D2010Ne

    殻模型では質量数奇数核の基底状態のスピンを例外なく予言できると授業で話しました。陽子対、中性子対を作って残った核子が入る軌道を授業で配った殻模型の資料から読みとって核全体のスピンとできることを思い出してください。正解者は1名だけでした。

成績分布

レポート等を含めた総合成績分布

  A評価  4名
  B評価  7名
  C評価  3名
  D評価  3名
  無評価  2名
  合 計 19名

課題

課題1

 陽子と中性子の差は無視して原子核の密度(質量/体積)を求めよ。
陽子の質量は 1.66 x 10-27 kg とする。

課題2

 1 eV の運動エネルギーを持つ電子のドブロイ波長を求め、原子の大きさと比較 せよ。同様に 1 MeV の運動エネルギーを持つ陽子のドブロイ波長を求め、原子核 の大きさと比較せよ。 電子の質量は 9.1 x 10-31 kg
プランク定数は 6.6 x 10-34 J・s とする。

課題3

 12C の結合エネルギーは何 MeV か。ただし 1 MeV = 1.6×10-13 J である。

課題4

 以下の (1)〜(5) の手順に従って 27Al の密度を求めよ。
(1) 電荷 Q が半径 R の球内に一様に分布しているときの電場エネルギー U を求めよ。(ヒント) ε0E2/2 を全空間で積分する。
(2) 27Si(Z=14) と 27Al(Z=13) との半径は同じ R であるとして電場エネルギーの差( dU = U(27Si) - U(27Al) )を与える式を求めよ。
(3) m(27Al) = 26.981539 amu
  m(27Si) = 26.986704 amu
  m(1H) = 1.007825 amu
  m(n) = 1.008665 amu
である。27Al と 27Si の結合エネルギー差 ( dB = B(27Al) - B(27Si) ) を求めよ。
(4) 上の dU と dB が等しくなるような共通の半径を求めよ。また
   R = r0・A1/3
とするときの r0 も求めよ。
(5) 27Al の密度を求めよ。

課題5

 τ = 1 / λ 及び T = log2 / λ を導け。

課題6

 238U の半減期は 44.7 億年、天然存在比は 99.274 %
 235U の半減期は 7.04 億年、天然存在比は 0.720 %
である。元素合成時に同数あったとすると(その根拠はないが大幅には違わないと期待される)、今までどれだけの時間が経過したか。
(関数計算機がない人のために)loge(99.274/0.720) = 4.93

課題7

 質量公式を使ってベータ安定線は次のように表すことができることを証明せよ。
N / Z = 0.97 + 0.015 A2/3

(ヒント 原子質量ではなく原子核質量の公式をA,Zで表し、与えられたAに対して極小を与えるZを求める)

課題8

重水素原子核の核子間距離がポテンシャル半径よりも大きい確率はポテンシャル半径よりも小さい確率よりも大きいことを示せ。(ヒント 両者の確率の比を求める)

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