雲に自分を映してそれを撮影する




撮影の趣旨

 雲よりも上に上がって、太陽と雲の間に入ると、雲に自分の影が写ります。さらに運がよい場合には360度丸い光輪(虹とは別の起源)を見ることができます。このブロッケン現象を動画に撮ることに挑戦しました。

取り付け位置

 サングラスに取り付けるのが最も単純ですが、機体の下面に貼り付けて自分も同時に撮れれば最高です。


まずはデジカメで静止画

 左側に生の写真、右側にガンマ補正した写真を示します。補正を行うと光輪がより濃く見えますが、背景(地上の様子)が暗くなります。下の6枚の写真はクリックすると大きく表示されます。

 ブロッケンが最も濃く写った写真。2011年9月12日撮影、西黒森山上空。機体もくっきり写っています。光輪の内側にもう1つの円盤状の光輪があるように見えます。光輪はガンマ補正するとさらに強調されます。光輪の中心に私が点状に写っています。



 私が最も大きく写った写真。2010年9月2日、白鷹山上空。右の写真のようにガンマ補正をすると光輪がはっきり見えます。雲に近い位置から撮影したので私の姿勢も見えます。光輪の中心には私の頭(厳密にはカメラ)があるべきです。中心の左下に私の足が伸びています。西向きに進みながら北側に見える光輪と影を右手に持ったカメラで撮影したので、影は左向きに写っています。機体は光輪の上にはみ出しているように見えます。クリックして拡大画像で確認してください。


 光輪も私も機体も地上の景色もバランスよく写った写真。2011年9月15日撮影、ゴルフ場上空。拡大すると足を左下に伸ばしているように見えます。





超小型ビデオカメラでブロッケンの動画撮影に成功

 普通のビデオカメラやビデオモードにしたデジカメを手に持っても撮影できると思いますが、その場合には雲に吸い込まれないように操縦しながら撮影しなければなりません。ここでの方法は両手が機体操縦に専念できるので安全に長時間撮影ができます。2011年8月28日、超小型ビデオカメラをサングラスに付けてブロッケンを撮影しました。それを再生しても、どれがブロッケンであるか分かりませんでした。カメラの性能のせいにしたくないので挑戦を続けました。9月25日にもブロッケンのチャンスがあり撮影した積りでいましたが、チャンスの前に電池が切れていたことが後で分かり失望しました。電池切れ対策として、超小型ミニビデオのスイッチを入れずにテイクオフし、チャンスがきてからスイッチを入れることにしました。これならば電池切れの心配がありません。その後しばらくの間、ランディングに近づいてから電源スイッチとシャッターボタンを空中で押す練習を繰り返しました。状態表示ランプを見ることなく、手袋をしたままボタンを押すので簡単ではありません。10月4日以前で成功率は60%でした。
2011年10月4日撮影、西黒森山付近、5.5 MB、49秒
 10月4日、早速チャンスに恵まれました。雲低高度1400メートルで雲の吸上げを利用して上昇しました。西黒森山方面で雲低より低い小さな雲を見つけてカメラの電源とシャッターを押して南側から雲に近づきました。これならば雲の吸上げに遭わず、安全に撮影に専念できると思ったからです。期待通りに雲に私の影が映り、私の頭の位置を中心とする多重の光輪が見えました。地上の景色も見えながらの撮影でしたので安全に撮影し、雲の上をそのまま通り抜けました。撮影に成功したかどうかはパソコンで確認するまで分かりませんが、成功を信じてこの場を離脱しました。
 左の写真は動画から抽出した生の画像です。動画を再生するにはこの画像をクリックします。
 ガンマ補正をしなくてもこんなに濃く写りました。これまで私がデジカメで撮影したどの写真よりも鮮明です。デジカメの静止画で見えた中央の円盤の色は白くなっています。中央円盤に私の影が、第1リングに機体の影が映っています。私が左側に進んでいることも見えます。さらに第1リングの外に第2リングが鮮明に、第3リングがかすかに見えます。12時の方向で第1リングと第2リングにまたがって見える白い筋、11時方向で第3リングにかかって見える白い筋はどちらも畑谷と嶽原の間の道路(県道17号線)です。地上で見る二重虹と違って、第1リングと第2リングの色順が逆転していません。


5重の光輪が見えた!

 左の2つの静止画は外側のリングを確認するためにガンマ補正したものです。色情報は歪められています。拡大するには画像をクリックします。左側の画像は上の画像と同じ瞬間のもので、3つ目のリングがはっきり見えます。4つ目のリングがあるかどうかは背景にある畑谷地区も明るく強調されるのではっきりしません。背景の畑谷地区が邪魔にならない位置になる瞬間の画像を選んでもっと強くガンマ補正したものを右側に表示しました。3つ目のリングは雲がくびれているために見える部分が減りますが、代わりに4つ目と5つ目のリングの一部が見えてきました。不鮮明になりながら幾重にも円があるのでしょう。多重光輪のブロッケンは初めて見ました。インターネットで「パラグライダー ブロッケン」で検索した範囲で多重光輪のブロッケン画像をこれほどはっきり撮影した例はありません。

何故うまく撮影できたのか

 地上で見る虹は画面からはみ出るくらい大きく見えるのに対して、ブロッケンの光輪はそれよりかなり小さいく多重リングにもなるので普通の虹とは違う原因で発生していることに気づきます。虹と違ってブロッケンはミクロン単位の小さな水滴による光の「ミー散乱」で起こります。肉眼ではどちらもブロッケンを見ることができていたのに、どうして8月28日の撮影がうまくいかず、この日の撮影がこんなにうまくいったのか、静止画だけでは理由が分かりませんので動画で撮影経過を比べます。8月28日の撮影では見えている時に「今ブロッケンが見えています。ブロッケンです。」と他のフライヤーに連絡した声が録音されています。ここをクリックすればその前後30秒ずつ1分間のビデオを再生します。それと成功例とを比べることができます。失敗例ではすでに発達し終わった大きい雲に横から接近しましたが、成功例では安全を重視して雲低より低い位置を上昇中の(発達中の)小さい雲に接近しました。この違いが撮影したブロッケンの写り易さに効きました。雲の発達中に水蒸気から水滴が形成され、水滴の大きさも成長します。ブロッケンを引き起こすミー散乱にはミクロン程度の小さい水滴が必要です。失敗例では大部分の水滴が大きくなっていて小さい水滴が少なく光輪が弱くしか発生しなかったと考えられます。肉眼では見えていたものの、動画では14時12分56秒に雲の縁が薄く色づいて見える程度にしか写りませんでした。一方、成功例では大きな水滴への発達途中でまだ小さな水滴が多くあったためにミー散乱が多く起こり、カメラにも濃く写されたと考えられます。単に太陽と雲の間に入るだけでなく、ミクロン程度の大きさの水滴を多く含む発達中の雲を選ぶのが成功の鍵です。10月4日の撮影は大収穫でしたが、もっと貪欲に色々な場面を撮影しなかったことが悔やまれます。今後はガンマ補正をしなくても、外側のリングも鮮明で全周が視野に入るような動画を蓄積していきます。

インターネットで見ることができる多重光輪

 http://pya.cc/pyaimg/pimg.php?imgid=29131をクリックすると地上(山頂)で撮影した見事な多重光輪の写真を見ることができます。そのページでは「虹のトンネル」と形容されています。第3、第4リングよりも第5、第6リングが濃く見えています。どうしてそのようなことが起こるか、については下をご覧下さい。

 http://www.youtube.com/watch?v=xxKnDk0ePasをクリックして閲覧できる動画の中の3:32付近の画像で薄く第2光輪が見えますが、そのことに投稿者は気づいていないようです。静止画を抽出してガンマ補正をすると第2光輪が鮮明に見え、第3光輪も部分的に見えるような気がします。鮮明度は本ページの動画と比べて劣りますが、本ページ以外で多重光輪をパラグライダーから撮影した唯一の例になります。

多重光輪についての考察

 普通に考えると、多重光輪は中心円盤が一番濃く、外側は徐々に薄くなるはずですが、インターネットで調べた例では外側の光輪の方が内側の光輪より濃い場合がありました。またこのページで表示した例で中心円盤が白かったり色がついていたりしていました。干渉縞が光輪中心から始まらない理由を見つけるために、インターネットでミー散乱の角度分布を図示するページを探しました。
 Online Mie scattering calculatorをクリックするとミー散乱の角度分布を計算して表示してくれます。水滴の大きさや波長などの代表的な数値が既に入っています。変更したい場合は数値を変更してCalculateをクリックするとミー散乱の角度分布が表示されます。上から4番目の対数目盛りのグラフが見やすいです。3つの曲線が表示されますが、そのうちの"Natural"に注目します。後方散乱ですので±180度付近がリング中心に対応します。水滴の大きさの初期値は1ミクロンですがこれを2ミクロンにすると光輪の数が増えて写真と似た分布が得られます。この図で内側より外側が強くなる場合があることが説明できます。波長の初期値0.6328ミクロンは可視光線の中で波長が長いほうに対応しますので、短いほうの波長0.37ミクロンを代入して計算すると光輪の数が増えて中心円盤付近での強弱が変わります。これで中心円盤が白かったり色がついていたしすることも説明できます。



その後のビデオ

2012年8月29日撮影、白鷹山付近、1.9 MB、16秒
 私が最も大きく写った動画。2012年8月29日、白鷹山上空。始めは機体も私もリングの中に写っていますが、最後には私だけが大きくリングの中に写っています。静止画ではガンマ補正をしています。静止画をクリックして動画を確認してください。




究極の目標

これは合成画像です。クリックすると拡大表示します。
 左の画像はトップページの2つの画像から合成したものです。究極の目標は機体下面にカメラを貼り付けて、この画像のように実物の私も視界に入れた動画を撮影することです。この場合はテイクオフ前にシャッターを押すので、電池の持続時間の問題があり、チャンスが少なくなります。これから寒い季節に入ります(上空では既に入っています)ので難しいです。来春以後の課題にしたいと思います。




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