機体から自分を見下ろして撮影する



撮影の利点

 最初は自分の飛行の記念撮影の積りでしたが、飛行中の動作のチェックにも役立つことが分かりました。フロント立上げの場合、機体の挙動を目で確認しているかどうかがカメラに写されます。私の場合は機体の左側を目視する習慣なので、カメラを左に付けた場合、テイクオフの時にカメラを見ている自分が見えます。
 また撮影したパイロットさんから、ソアリング中の自分の癖を見ることができて役に立ったと感謝されました。私もローリングが左右対称でない自分を見つけました。


取り付け位置

 機体の下面にマジックテープでカメラを貼り付けて飛行中の自分を撮影します。リブの線上に貼り付けるとカメラは意図しない方向を向いてしまします。機体にテンションがかかるとリブに沿ってV字形に変形するからです。機体が膨らんだときに下面が平面になる位置に、つまりセルの中心に、貼ります。
 前後位置はBラインの付け根付近に貼るとパイロットが画像の前後中心位置に撮影されます。機体によってあるいは構図によってカメラの前後位置を調節します。
 カメラ脱落防止の紐を機体のラインの付根に、縛ることも必要です。撮影中に機体が潰れ、回復時のショックでマジックテープが外れ、ランディングするまでカメラが紐にぶらさがっていたことがありました。紐の配置によっては、紐が画像の邪魔になったりカメラの向きを変えたり、画像振動を引き起こしたりします。写真のように紐がV字型になるように2ヶ所で機体に留めるといいようです。紐はパラグライダーのラインと同じものを、カメラのストラップ穴に通すだけにします。



撮影の留意点

 パイロットまでの距離は調整できませんが、下の例のように、画面の中でパイロットは、大きすぎず小さすぎず、丁度よい大きさを占めます。
 テイクオフの短い間(機体の翼形が安定するまで)動画が乱れ、静止画でも流れる画像が多くなります。これはカメラの性能で、どうしようもありません。
 視線方向や進行方向のビデオを撮る場合には見慣れていた画像の集合になりますが、キャノピーにカメラを付ける場合は、この方法でしか撮れない独特の動画になり、飛行中の自分を写した喜びは大きいと思います。しかし、背景になる風景は思ったよりも狭い範囲に限られます。できるだけ変化に富んだ地上の構造を写しこむようにしないと単調な動画になってしまいます。
 機体中央にカメラをつける場合、背景として真下の狭い範囲しか撮影されないという不満があります。機体下面の左右の端から斜めに自分を写せば、もっと変化に富んだ景色を入れることができます。この場合、真上から見下ろす場合よりもパイロットの動作が意外によく見えることが分かりました。翼端のどの位置に貼り付けるかは、経験を積むしかありません。また左右のどちらに付けるかはセンタリングの多用する方向やエリアルールで決まっている旋回方向を意識し、旋回内側に貼り付ければ広い範囲の遠景が入ります。


動画振動の問題と対策

 翼端にカメラを付ける場合、コマ毎に抽出する静止画は問題ないのに、動画がガタガタ動く現象が起こっています。画像振動の激しさは機体と取り付け位置に大きく依存します。機体中央に付けるときには起こらず、翼端付近に付ける時に起こったので翼端が振動しているためと考えました。その後2号機を機体中央に付けたときにも激しい画像振動がみられたので翼端振動以外の理由もありそうです。紐をカメラの上流(前方)に付けると画像に紐が写って邪魔になりますが、下流(後方)につけると画像振動が大きい傾向があります。また、カメラの中央部に紐を縛った1号機とカメラ先端を縛った2号機とで後者の画像振動が大いに深刻であることから、画像振動の起こり方は落下防止紐のカメラ側の取り付け位置にもよると思われます。紐の振動がカメラの画像振動を引き起こしているように思われるので、紐の振動がカメラに伝わらないように工夫する必要があります。
 落下防止紐を空気抵抗が小さくなるように解体したパラグライダーから回収したラインに切り替えました。その後、機体のラインとの絡みの危険を考慮して、落下防止紐は機体のラインよりも切れやすい糸に変更することにしました。ライン取り付け位置とセル中心との位置関係が機体に依存するので、カメラ位置と落下防止紐の取り付け位置について試行錯誤を繰り返している途中の動画です。紐がカメラに力を与えないためには紐の機体への取り付け位置をカメラより前に、紐が視界の邪魔にならないためにはカメラより後ろに取り付けるべきです。
2010年11月25日撮影、2.9 MB, 23秒
この矛盾を解決するために、カメラの紐の穴には紐を通すだけとし、その両端をカメラよりも斜め前の左右2箇所で機体に縛りました。他の機体ではすでに成功していますが、上の動画の撮影時点で、私の機体で動画振動が起こらないようにすることにまだ成功していませんでした。
 試行錯誤の結果、カメラ貼り付け位置を上の例よりも1セル分中央側にずらし、紐の形を左右対称なV字形にすることによって動画振動を殆ど解消しました。上の動画と比べれば格段の改善です。取り出した静止画も精密であるような気がします。取り付け位置を機体中央に近づけたのにも関わらず、パイロット位置が画面の端に寄っています。これは画面の中央に寄らないようにセルの膨らみの曲面を意識して少し下向きになるようにセル内で中央より翼端に近い位置にカメラを貼り付けたためです。遠景を多く取り込むためにローリングをしました。右の動画はアニメーションGIFファイルで画質と音声を犠牲にしています。音声付きで普通の画質の動画を見る場合は右の動画をクリックしてください。



マジックテープ粘着剥がれの問題と対策

 私の機体でのカメラ固定位置は確定していますので、マジックテープの一方は機体に貼り付けたままで問題ありません。ところがカメラを他のフライヤーの機体に貼り付けた場合に、マジックテープ面ではなく機体との粘着面で剥がれ、カメラが落下防止紐でぶら下がってしまうことが続出しています。新しい機体ほど頻繁に起こりました。理由として考えられることは、新しい機体では表面がコーティングされていて粘着しにくい、冬季に気温が低いために粘着しにくい、などが挙げられます。カメラをガムテープで機体に貼り付けてもうまくいきませんでした。このため多くのフライヤーの期待を裏切ってしまいました。もっと粘着力が強力なテープを探すことが考えられますが、新品の機体のコーティングを劣化させることはしたくありません。
 粘着を使わず機体下面の布を磁石で挟んでにカメラを固定する新しい方法を開発しました。極性の違う極が向き合うように2つの磁石で挟めば磁石の力は2倍になりますが、カメラを取り付ける側は磁石よりは薄いことが望ましいので、磁石は布の上側だけ(エアインテーク内)にし、下側は鉄の円盤にして布を挟みます。万一磁石が外れても磁石がエアインテークに残ることを期待しています。その鉄円盤にカメラをマジックテープで貼り付けました。
 使った磁石はサンギョウサプライ社の「ネオジキャップ」型磁石です。ここでは「キャップ」が付いていることが重要です。同社のサイトからコピーした右の図の断面図で斜線を引いた部分が磁石で磁極は円柱上下面にあります。磁石の下面と側面を囲む鉄のキャップは図で下の極を通る磁力線を空気の数千倍の効率で通し、吸着面のすぐ脇(キャップの上の面)に導きます。これに鉄の円盤を向かい合わせれば磁力線は磁石、キャップ、円盤、磁石と一回りし、外界への磁場の漏れ出しを遮蔽することができるばかりでなく、磁石の吸着力は大幅に増大します。冷蔵庫などに磁石で貼り付ける強力なフックから取り出せるネオジウム磁石は四角くてキャップの脇が空いていて磁場の遮蔽効果が弱いこと、四角の角がキャノピーを傷める可能性があること、などのためにここの目的には不向きです。磁石本体は円柱形が理想的です。円柱中心、キャップの中心に穴がなければもっといいのですが、製品リストにはありません。
 左の写真で右側に置いた磁石は吸着面を下側にし、中央に置いた鉄円盤(鉄のワッシャーで代用)とでキャノピー下面の布を挟んで向かい合わせます。磁石の円形の縁がキャノピーを傷めないように間にPETのフィルムを挟みます。写真では透明な物が見えます。PETの廃物利用で尖った部分がないように切り取りました。ワッシャー側の円形の縁は丸められている側を使うので何も挟む必要はありません。ワッシャーの裏面は丸めてないので避けるべきです。その面にはマジックテープを貼り付け、それに写真左側に置いたカメラを付けます。マジックテープをキャノピーに貼り付ける場合と比べて安定していて、飛行中に円盤から剥がれる心配は全くありません。ワッシャーとカメラとの間のマジックテープ面の結びつきは十分ではないので、安全のため、カメラのストラップ用の穴に解体パラグライダーから回収したラインの紐を通して両端を紐がV字型になるようにパラグライダーのAラインまたはBライン付け根2箇所に縛ります。
 鉄円盤は直径40ミリ、厚さ2ミリのワッシャーが入手できた最大のものでした。磁石は強すぎると機体から安全には外せなくなり、弱すぎると勝手に外れるので適度の強さのものを選ぶ必要があります。3通りの磁石を購入して比較した結果、外径25ミリ、高さ8ミリ、吸着力 14 kg重、重さ23グラムのものを選びました。人の力で磁石のキャップをつまんで円盤と磁石を縦方向に引き離すことはできません。フィルムをつかめば引き離す力を入れやすくなりますが、これではフィルムが破れてしまいます(既に数枚破れてしまいました)。磁石を横方向にずらせば外せますが機体を傷つける可能性があります。それを避けるためにも磁石と布の間に保護のために挟んだフィルムは必要です。 磁石、キャップ、ワッシャー全てに空いている穴は無い方が好都合ですが、穴なしは手に入りません。特にキャップは穴なしであったり、もう少し厚いほうが理想的です。キャップの背面側では洩れ磁場が少しあります。ここに電子機器は近づけないほうがいいです。ワッシャーは市販のものを使いましたが、適正な大きさの円盤であればもっとよいと思います。ワッシャー側はカメラを付けるので気になりますが、マジックテープの厚さの分だけ離れることも効いて、洩れ磁場は十分遮蔽されています。磁場がカメラに悪影響を与えるかどうかは別として、これまで5回の撮影でカメラは正常に働きました。
 この磁石をキャノピーから外して収納するとき、磁石を円盤から離しておくと磁極が露出しているので、他の電子機器に悪い影響を与える可能性があります。
2011年2月11日撮影、0.7 MB, 5秒
特にキャノピーから外したばかりのカメラを裸の磁石に近づけないように気をつけるべきです。右の写真のように磁石の吸着面にワッシャーを保護フィルムを挟んで密着させて、外部に磁場が洩れないようにすれば安全です。さらに鉄の容器にいれておけば十分です。ただし、磁石を容器内面に直接貼り付ければ容器の外に磁場が洩れるので、注意が必要です。容器の鉄の厚さでは磁石からの磁力線を十分吸収できないからです。
 これ以後の撮影は全て成功しています。マジックテープの粘着が剥がれない機体での旧方式と比べても動画の安定性は優れている感じです。左のビデオはこの方式で最初の飛行をした阿部組長です。カメラに挨拶している組長の歓声を聞いてください。


撮影例

2011年7月6日撮影、2.6 MB, 22秒
 (左)立ち上げから安定して撮影できた例。カメラを機体に貼り付ける方法では、立ち上げの間は画像が安定しないものでしたが、この例では例外的に立上げ初期から安定しています。撮影場所はイカロスカップが開催されるサンチレールです。カメラをセットするのに時間をとるために、長いテイクオフの後ろで機体を広げました。そのため助走時間が長くなります。





2010年5月5日撮影、3.0 MB, 53秒
 (右)機体中央にカメラをつけてソアリング中。白鷹山レーダードーム最上部の150メートル上から第1テイクオフを撮影しました。相原機が写されるために視野に入ってきます。前後の弱い揺れでも機体が後退しているように見えてしまいます。





2010年7月8日撮影、2.9 MB, 215秒

 (右)機体右側にカメラをつけて宮田選手のセンタリングを撮影しました。動画振動問題解決以前の撮影ですが、1号機であったために、軽い振動ですんでいます。初めての機体なので、最適位置よりも翼端に近くカメラを取り付けてしまいました。そのため、右回りのセンタリングの時以外は宮田選手が視野の外に出てしまいました。テイクオフと新山平との間で一気に上昇した場面です。さすがですね。バリオの音が一定間隔なのが分かります。バリオの音も録音されたことは意外でした。他にも迫力のあるセンタリングがありましたが、左回りのために左手しか視界に入っていない上にバリオの音も聞こえにくいので割愛しました。





2010年11月6日撮影、1.0 MB, 8秒
 (左)カメラ3号機を奥山さんのキャノピーの右側に取り付け、バンクの大きいシーンを入れるように依頼しました。動画振動を解決した最初の撮影です。最適位置よりも中心に近く取り付けてしまいました。そのために水平飛行では左側の景色が遠くまでは入っていません。意識して大きく右にバンクをかけた時には遠景が入っています





2010年8月23日撮影、1.0 MB, 7秒
 (右)1号機での撮影です。動画振動を解決する以前の撮影で振動が深刻でした。白鷹町のデイサービスの団体がテイクオフに見学にきていました。車を運転してくれた哲ちゃんが引率の方に「一番うまいパイロットを連れてきた」と紹介してしまいした。そのプレッシャーを受けてのフライトです。カメラをセットしている間に深瀬さんが飛び出して私だけになりました。機体に空気を入れただけでも拍手されました。お年寄りの方々の声援を受けてテイクオフしました。どうもありがとうございました。私も空から手を振って応えました。パイロットの動作と背景との結びつきのある動画を撮れると嬉しいものです。





2011年7月6日撮影、2.5 MB, 22秒
 (左)サンチレールでは見事な崖でリッジソアリングができます。機体と私の影が崖に映っています。崖に近づくと影が大きくなり、迫力を感じます。ホームページで表示される動画のほうが高画質である代わりに短時間です。





2011年9月29日撮影、1.1 MB, 8秒
 (右)真篠さんの機体の左側にカメラを付けました。リバーステイクオフでは機体の確認を十分しているので向きを変えた後ではそのまま走り出すのが普通です。私はフロントテイクオフでも一瞬しか機体を見ませんが、真篠さんはリバーステイクオフでも顔を上げてしっかり機体を確認していました。私も見習いたいと思います。



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