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接続保留問題とエネルギー蓄積システムの課題

接続保留問題の背景

左の図は電力需要変化にどのように供給を合わせるかを示しています。経済産業省は昼夜の電力需要変化への対応の観点から「太陽光、風力」以外の電源を3通りに分類しています。

「ベースロード電源」は電力需要に対応して出力を調整することができない電源です。原子力発電はこれに属します。チェルノブイリ原発では発電量を下げる実験に失敗して大事故を起こしたことはよく知られています。電力会社は需要の少ない夜の時間帯(23時〜7時)に「深夜電力料金」メニューなどを設定して電力消費を増やす工夫をしています。それでも左の図のように需要が平準化していません。なお、「エコキュート」は電力を熱に変えるものですが、火力や原子力でのタービンに送られる熱水を直接家庭に配給すること、または家庭で燃料から熱を発生させることと比べると3分の1程度のエネルギー利用率になります。3分の2の熱エネルギーを無駄遣いする深夜電力は「エコ」ではありません。

「ピーク電源」は需要変動に総発電量が合うように調節するのに適した電源です。揚水発電は余剰電力で水をダムの上側に揚げておいて電力が必要な時に発電するもので、巨大な蓄電池の役割を果たします。

中間にある「ミドル電源」は上記両者の中間に位置づけられるものです。

これらと比べて「太陽光、風力」は気象条件によって出力が変動する「気まぐれ電源」であるために、電力需要に供給を合わせるときの厄介者にされる傾向があります。日本全体では全発電量に対する「太陽光、風力」の比率は2012年にはまだ1.6%で、ピーク電源の調節範囲に十分入っています。しかしこの図は日本全体の発電量であり、個別電力会社では内訳の偏りによって需要変動への対応がこれより難しくなります。そのために電力会社間の電力融通が必要です。残念なことに東日本と西日本で交流の周波数が異なることも電力融通の障害の1つになっています。

北海道電力が電力固定価格買取制度発足直後から接続契約を保留したために北海道で日本最大を目指したメガソーラー設置が止まってしまいました。その後、大型蓄電装置の設置や火力発電の比率が高い東京電力との電力融通枠が拡大されたことによって巨大メガソーラー建設が始まりました。

一方、九州電力管内では2014年現在、国内最大の「大分メガパワー」、国内第二の「七つ島メガソーラー」を含む多数のメガソーラーが設置され、さらに長崎県宇久島に、これらの5倍も大きいメガソーラーが計画されるに至っています。

左の図は資源エネルギー庁による日本全国のデータです。青で示されたものが認定量、赤で示されたものが送電まで進行したものです。発電量増加をはるかに超えた接続認定量の異常な増加はどうして起こっているのでしょうか。発電の敷地や設備を取得してから認定取得や接続契約が不調になって設備が無駄になるリスクがあれば発電が増えませんので、認定取得にも接続契約にも敷地取得や発電設備建設が終わっていることは条件にされていません。接続契約後に土地取得、設備建設をするのが普通です。そのために、敷地と設備費の見通しがなくても、単価が高いうちに接続認定を取得してしまうことが横行しています。とくに単価引き下げ直前である3月の駆け込み取得が目立ちます。認定申請が電子申請で無料で簡単にできることは歓迎すべきですが、準備不足のまま安易に認定申請することも横行しているようです。売電価格が高いうちに架空の計画で認定を多数取得してそれを売るブローカーが暗躍しています。 その根拠として消費者庁からの「設備認定を受けただけで実体のない太陽光発電所の所有権を分割販売する「株式会社アイコン」に関する注意喚起」に リンクしておきます。 売電単価引き下げは発電設備経費の値下がりに対応して設定されるはずです。そのために売電単価確定後(接続契約後)は太陽電池パネルの値下がりを待って、できるだけ遅く設置する方が有利であることも認定量が発電量より多い原因になっています。

両者の大きな差を引き起こしているものは大部分(96%)がメガソーラーです。経済産業省は実現見込みの無い認定の取り消しを始めました。さらに2014年度から、出力が50kW以上の太陽光発電設備は認定から180日以内に土地と設備を確保できないと権利が失効するように認定ルールを変更しました。

2013年3月の駆け込み認定の後は緩い増加で推移し、2014年3月にもっと大きい駆け込みがあり、認定量が2014年3月で7000万キロワットに届きそうになりました。4月以後は認定が失効したり、非現実的な認定の抑制により、認定量は前年度の半分程度の月間30〜50万kWの増加で低迷していました。資源エネルギー庁のデータ公開サイトで8月以後のデータを見ることができます。それによると8月の6943万キロワットを緩いピークにして9月以後は減少しています。住宅設置の小規模発電は一貫して緩やかに増加していますが、全体の大部分占めるメガソーラーは減少を続けているのです。一方で発電容量は8月で1726kWにしか増えていないこともそのページのデータから読み取れます。

2014年9月に九州電力が、10月に北海道、東北、四国の電力会社が再生可能エネルギー利用の受電接続契約を保留し始めました。電力会社では供給電力が需要電力からかけ離れないように発電量を調整していますが、その調整限度を超えてしまうと停電などの障害が発生します。これを避けるために接続契約を保留するというものです。 左の図は電力固定価格買取制度発足後の東北電力管内の接続認定量のデータです。東北電力の昼間の最低需要電力は約790万キロワットとされています。この接続認定量のとおり実際に送電されると障害が発生することになります。

この図から太陽光発電等を増やす余地がもうないように思ってしまいます。再生可能エネルギーからの発電容量が認定容量より遥かに少ないことを知っていながらそれを表示していないこの図には太陽光発電等への期待に水を差す意図があると思われてしまいます。

九州電力が契約保留を言い出した9月には発電容量が認定容量より遥かに少ないことを経済産業省よりも先に知っていたはずです。続く北海道、東北、四国の各電力も接続保留は時期尚早でした。これらの電力会社の措置は、準備不足の接続認定手続きに注意を喚起する効果はありますが、再生可能エネルギーの機運の高まりに水を差すものとして批判されるべきです。この行為は原子力発電再稼動への布石であると言えます。電力会社の供給電力は再稼動審査を終えた原発ばかりではなく、まだ申請していない原発、老朽化して使い物にならない原発もすべて再稼動するとして計算されていることは重大な問題です。

太陽光が当たっている時しか働かない太陽光発電の稼働率が12%程度であるために、平均発電量は発電容量の12%くらいしかありません。エネルギー資源量を考える時はこの平均発電量で議論すべきです。既存の大型水力発電を除く再生可能エネルギーによる発電量は全発電量の3パーセント程度に過ぎません。決して太陽光発電が十分に普及したのではないことを確認し、これまで以上に再生可能エネルギーを拡大していかなければなりません。

個別の太陽光発電は「気まぐれ発電」ですが、多数の発電所の出力を合わせると個別の時間変動は平均化されて合計では変動が小さくなります。


上の図は 「NTTスマイルエナジー」のページから引用しました。少数のメガソーラーよりも多数の小規模太陽光発電の方が出力の時間変動が小さくなります。電力需要の大きい日中に多く発電するので電力の需給バランス調整に役立ちます。日によって発電量が変化しますが、変動周期は1日に伸びるので、「ミドル電源」も需給調整に動員できます。同社は東京電力管内で2月から小規模発電所の電力を通常価格よりも高く電力を買い上げて時間変動の小さい電力を新電力最大手の「エネット」に売ることにしています。

左の図はスマートジャパン2016/12/19の記事からダウンロードしたものです。2016年12月1日、デンマークの風力発電が全消費電力に占める割合の変化を示しています。風力発電が全消費電力100%を超えて115%まで発電している時間があります。これでも接続保留は起こりませんでした。周辺の国との電力の売買で過剰発電分も有効に利用されています。デンマークよりも広い日本では電力会社間の電力の融通でやりくりできるはずです。

世界的に発電に占める再生可能エネルギーの比率は20%を超えています。それでも接続保留は起こっていません。日本の行き過ぎた接続保留騒ぎは原発再稼働を狙う電力会社の宣伝に過ぎません。日本での接続保留は外部との電力融通が不自由な種子島で起こりました。


エネルギー蓄積の課題

日本には外部と送電線で結ばれていない島が多数あります。そのような島に太陽光や風力の発電所を設置しようとすると、系統に接続できるかどうかの問題がすぐに起こります。既存発電設備の需要追随能力が十分でない場合には、蓄電設備を新設しなければ、太陽光発電や風力発電を普及できません。外界との送受電や物資の補充が不自由な南極の昭和基地では、小規模な風力発電で水素を生成貯蔵し、水素混合ディーゼル発電機で活用しています。

再生可能エネルギーのシェアーを100パーセントまで引き上げるためには、火力発電に頼らずに、発電量の変動を吸収できるシステムを構築する必要があります。原理的には大規模な蓄電池システムで実現できますが、電気自動車からの中古電池を利用しても、気が遠くなるような量が必要になります。蓄電池よりも便利な蓄電システム実現に日本が世界最先端を進んでいる技術を利用できます。「水素エネルギー」です。水素を他のエネルギーを使って生産するので水素は一次エネルギーではありません。太陽光、風力発電の余剰分を使って水の電気分解で水素を生成し、それを貯蔵して必要な時に燃料電池などで電気に戻すことができます。水素エネルギーについての詳しい情報はNEDOの「水素エネルギー白書」を参照してください。

普通の水素は1気圧、常温では気体ですので、体積が大き過ぎて貯蔵や運搬には特別の設備が必要になります。水素を冷却して体積が800分の1の液体水素にして貯蔵運搬する方法や700気圧くらいまで圧縮して高圧ボンベに入れて貯蔵運搬する方法があります。燃料電池自動車では後者の方法が採用されています。また液体であるトルエンに体積で500倍の水素を吸収させてメチルシクロヘキサン(MCH、液体)にして貯蔵し、必要な時に触媒によって水素とトルエンに戻すことができます。この方法は昭和基地で活用されています。さらに「水素吸蔵合金」は合金の1000倍以上の体積の水素を常圧で吸蔵できるという大きな利点があり、開発が進められています。しかし重量当たりの水素貯蔵量では他の方法に劣りますので、船に搭載するか定置での利用が考えられます。

水素から電気に戻す方法では、小規模な場合は燃料電池自動車や家庭でのエネファームでの燃料電池として実用化しています。大規模な場合は水素をディーゼル火力発電の燃料に追加して使います。2015年に川崎市に90メガワットの水素発電所が完成します。また水素の貯蔵と輸送を別の方法で代行することもできます。水素と炭酸ガスから一酸化炭素を経由してメタンを製造し、これを既存の都市ガスのシステムに供給すれば家庭でエネファームによってメタンから水素を取り出して電力に変換できます。

HyGrid研究会(再生可能エネルギーと水素を活用した低炭素社会の実現に向けた研究会)作成のイメージ図

燃料電池自動車の開発では日本の自動車メーカーが世界の最先端を走っています。2015年に東京・大阪・名古屋・北九州の4大都市圏で水素ステーションが設置され、燃料電池自動車の普及が始められます。特に北九州市の取り組みが先行しています。大阪府が関西国際空港で実施しようとしている「水素エアポート」も注目に値します。

左の図はホンダのスマート水素ステーションです。このステーションで電気と水から水素を作り、燃料電池自動車に供給するシステムです。水素の貯蔵は電気の貯蔵より容易です。電気自動車が一般家庭2日分の「電源車」になることに対応して、燃料電池自動車は6日分の「電源車」になります。太陽光発電や風力発電の変動する電力を水素ステーションのネットワークに供給することで出力変動問題はかなり解消できますが、燃料電池自動車の普及に依存するでしょう。


「水素エネルギー」は、気象条件によって勝手に変動する「気まぐれ電源」や需要に対応して出力を変えることのできない「ベースロード電源」に、「ピーク電源」にある電力需要追随能力を与えるものです。また送電線を設置できない島や洋上発電所と系統との間の電力輸送の媒体にもなります。




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