ホームページ  前ページ  ページ末尾  次ページ

ソーラーシェアリングの将来性

2009年の日本の総発電量の9565億kWhを太陽光だけで発電するには、日本の農地面積400万ヘクタールのうちの100万ヘクタールでこのシェアリングを適用すればいいことになりますが、そのためには農地の大部分をしめる水田でのソーラーシェアリングの普及が必要です。

頑丈な架台の場合

左の写真は『全国農業新聞』2012年9月28日号1面に載った三重県伊賀市の和田さんの水田です。出力65キロワットの発電所です。遮光率を40%と50%として、通常栽培の73%、81%の収量となりました。遮光率が高すぎたようです。

この写真で強固な架台で屋根に当たる場所にまばらに太陽光パネルが設置されています。架台を含めた設置費用が3000万円ということで、1キロワット当たりでは46万円と割高になります。太陽光発電パネルは値下がりしていきますが、架台にかかる費用を水田でも節約できなければ普及が進みません。また農水省の一時転用の指針が出る前に設置されたために、容易に撤去できるという指針の条件を満たしていません。

農水省の指針が遡って適用されるとしても、営農が続く間は活用できることを期待します。その場合、パネル数を減らす必要があると思われます。



単管パイプ架台の場合

2014年6月、単管パイプ架台を使ったソーラーシェアリングが水田でも作られました。左の写真は株式会社「発電マン」が伊豆の国市に設置したものです。柱はコンクリートで固定しています。トラクターやコンバインなどの大型農業機械も動ける構造になっています。またパネル傾斜角は「ソラカル」システムで簡単に変更することができます。



上の例では稲作での実証情報がありません。

2014年12月、水田で単管パイプ架台を使ったソーラーシェアリングが出現しました。山形県東根市の秋葉農場です。幅30センチの細長いパネルを使っています。雪国ですが傾斜角度固定式です。標準のソーラーシェアリングとは異なる規格で、独自の問題と工夫があります。

2015年5月に田植えをして10月6日に収穫をしました。水田での成功例第1号かも知れません。写真は東西方向に長い水田で、西から東に向かって撮りました。コンバイン使用のために、水田の中で架台の外側四方に、約5メートル幅の旋回スペースを確保しています。写真左側でパネル2列分の影が見える部分は刈り終わった部分(水田の内側でパネルの外側)です。東西方向の柱の間にも稲を植えたので南北方向にもコンバインを走らせましたが、旋回不十分で、手刈が必要な部分が残りました。2号機を作る場合は、東西方向の柱の間の耕作を放棄し旋回スペースを東西だけに限定することによって、パネル数を増やすことができると思われます。

遮光率を低く抑えたために収量も品質も上々でした。水田でのソーラーシェアリングが普及することを期待します。



単管パイプ架台で10メートルのスパンを実現した例

ソーラーフェニックスは アーチ型の特殊単管パイプを使って南北方向の支柱間隔を10メートルに広げた製品を売り出しています。これでトラクターやコンバインなどの大型農機が動きやすくなります。パネル傾斜角は「ソラカル」システムで簡単に変更することができます。1本の単管パイプにパネルを取り付ける傾斜角可変方式の最大の弱点はパネルが単管の周りを回転しないように抑える力が不十分であることですが、このシステムでは専用の「ワンタッチグリップ」で締め付ける力を強化しています。ホームセンターでは入手できない特殊な架台材料を使っていますので、個人で真似することは難しいと思います。「日本発 積雪地域対応ソーラーシェアリング」という表現には賛成できませんが、このようなソーラーシェアリング発電が区画整理された水田(30メートルx100メートル)に無駄なく配置できる大きさに進化して普及することを期待します。

吊り橋構造でパネルを支える例

佐賀県三瀬村の棚田に写真のような構造の発電設備が作られました。これは http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1602/01/news039.html から引用したものです。 NEDOと福永博建築研究所とのプロジェクトです。詳細は引用元を参照してください。

水田の外側からパネルが支えられていることが大きな特徴です。農作業の必要に応じてパネルを上下に移動することが可能です。風による横揺れや捻じれを抑えるためと思われる構造物が中間点付近にありますが、それ以外に水田の内側に農作業の障害物がありません。建設費が気になりますが、普及することを期待します。



集中的に影を作る架台の場合

フジプレアム社は左の写真の太陽追尾架台に載せた太陽光発電システムを水田に設置して、陰になる部分で稲作に影響がなく稲刈りの作業にも支障がないとしています。しかし太陽光発電パネルの影が大きく集まっていて、太陽位置の動きによって影の影響が水田内で均一化されることはあまり期待できません。これでは生育の劣る部分が集中的に発生するでしょう。

写真をクリックするとYouTubeにリンクします。その中で日本の水田で大規模に太陽光発電を展開する「日本列島メガソーラーベルト構想」を提案しています。動画では1反に3kWのものを6台設置することが提案されていますが6台だけなら畦に置くことができ、水田の中にはもっと分散して数多く設置することができるはずです。


その後、フジプレミアム社は姫路市との共同社会実験研究「農地活用型太陽光発電研究事業」でより大きな発電機4台を2013年7月に完成させました。左の写真は近畿農政局によるものです。この写真では柱が高くなっていますが、まだ上で指摘している問題点をクリアしていないように見えます。遮光率が発電設備付近で極端に高く、そこでは劣等米しか採れないでしょう。発電設備の数を抑えて全く遮光しない所で採れる優良米が80%以上であれば、農水省指針の基準を満たしますが、この方式は光飽和点を超える余剰光を活用するソーラーシェアリングではありません。ソーラーシェアリングでは収量を犠牲にしない範囲で発電を行うものですが、この方式は農作物収量の20%を意図的に犠牲にして発電するものです。この方式を進めると農地の20%を劣等農地、80%を優良農地と分けて劣等農地で普通の太陽光発電をすることが横行します。

高価な太陽追尾架台なので発電量を大きくしたくなりますが、パネル数を減らして稲作にしわ寄しないことを実証することを期待します。



左の図はNEDOが「太陽光発電多用途化実証プロジェクト」の実証事業として2013年11月に採択したもののイメージ図です。NEDOのページから引用しました。追尾システムの簡素化、低コスト化が評価されます。農地の20%までこのような影の集中したところを作る意図があるのでしょうか、気になります。柱を高くして影の影響を拡散することを期待します。


上の3つの例ではパネルの影ができる部分での農作物の生育を軽視している恐れがあります。その場所で生育がどんなに悪くても農地の20%以下に抑えれば一時転用の条件を満たすことは容易です。一時転用の条件は巨大水田の5分の1にメガソーラーを設置しても満たせますが、一時転用は農地の20%の自由使用を認めるものではなく、光飽和点以上の余剰太陽光を有効利用するものであることを忘れてはなりません。


牧場の場合

水田だけでなく牧場にもソーラーシェアリングは利用できます。左の写真はフランスのレ・メのメガソーラーです。73メガワットもの大きさがあります。これを航空写真で見てみましょう。ここをクリックするとグーグルマップの航空写真が現れます。適当に拡大や縮小をすることができます。発電施設の大きさに驚かされます。元々牧場だった所に太陽光発電を追加したものです。20年間発電してからパネルを撤去し、元の牧場に戻すという計画ですが、その時にはもっと大規模高性能の発電所になるという予想もあります。

太陽光パネル架台の間隔が普通のメガソーラーと比べて大きいこと(遮光率は50%程度であること)が読み取れます。太陽光発電が牧畜とが共存するためです。「ソーラーシェアリング」と称していませんが、太陽光の恵みを発電と牧畜とでシェアーしています。遮光率の均一性はよくありませんが、牧草はともかく動くことができる牛にとっては強烈な日差しと涼しい日陰に分かれているいることも有用だと思われます。牛の行動を妨げないように架台付根はコンクリートの土台を使わず、直接地面に埋め込んだ柱が狭く直線に沿って並んでいます。

日本のメガソーラーで地面の処理を手抜きしたために雑草がパネルより高く生えてきて困っていたり、それを避けるために架台を高くして経費が割高になったりしていますが、家畜に除草してもらうことも有効です。



日本最大のメガソーラーはソーラーシェアリングで

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1406/13/news025.html から引用

2015年に建設が開始される予定の「宇久島メガソーラーパーク」計画は実現すれば430MWの規模で日本最大のメガソーラーになります。 この計画はドイツの太陽光発電事業者であるフォトボルト・デベロップメント・パートナーズ(PVDP)が中心になって日本に設立した「テラソール合同会社」が進めています。この計画では長崎県五島列島最北端にある宇久島の630ヘクタールの農地の上に172万枚の太陽光パネルを設置します。

図からもこの計画がソーラーシェアリングで進められることが分かります。農場は分散していても島の総面積の4分の1も占めるので、島全体が巨大な1つの発電農場のように見えるでしょう。

残念ながら、建設を開始したという情報がありません。九州電力の接続拒否によって計画が止まっているのではないかと懸念しましたが、九州電力との間の手続きは終わっています。太陽光発電設備によって景観を損なう問題で地元住民の了解を得ることが課題になっているようです。計画の成功を期待します。



ホームページ  前ページ  ページ先頭  次ページ