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電気を栽培する目的

再生不可能エネルギー依存の経過

「再生可能エネルギー」の逆の「再生不可能エネルギー」の大規模な利用は産業革命に遡りますが、日本では明治維新以後です。さらに発電での利用の歴史はもっと新しくなります。昭和30年代の「高度成長」時代以前、発電の大部分は再生可能エネルギーである水力によって行われていました。それが再生不可能エネルギーによって置き換えられてきた経過を下の図を見ながら振り返ってみましょう。

発電電力量の推移 1971年までは9電力会社計 資源エネルギー庁のページから

この図は発電のエネルギー内訳の歴史を示しています。一次エネルギー全体の内訳ではなく、発電に使われたエネルギーの内訳であるのことに注意してください。図の左端の1952年、水力が発電の主役でした。1960年ころには開発し尽くされて新規開発の余地は殆どありません。そのため高度成長による電力需要を満たすことはできず、「石炭火力」発電が推進されました。1963年から火力が優勢になりました。しかし石炭火力の利用は窒素酸化物、硫黄酸化物を大量に大気中に放出したために「光化学スモッグ」を引き起こし深刻な社会問題となりました。大気汚染を引き起こす石炭に代わって石油が火力発電の主役になってきました。しかし、1970年代の2度にわたる石油ショックのために石油の安定供給に疑問がもたれ、液化天然ガス(LNG)発電と原子力発電が参入し、次第にシェアーを増やしてきました。一方、石炭火力発電は脱硫装置などの技術開発により大気中に排出する有害物質を大幅に減らせるようになり、再登場してきました。政策としても、資源の少ない石油の消費を減らすために、石油火力発電を石炭火力発電で肩代わりするように位置づけられています。総発電量の急激な増加はバブル経済の崩壊と共に冷え込み、20世紀末頃から緩やかになりました。その後、2007年をピークとして総発電量は減少しています。この減少の背景には景気の問題の他に省エネルギー技術の進歩があります。2011年の東電福島第一原子力発電所の大事故により原子力発電の安全性に疑問が持たれ、原発の全面停止期間がありました。原発が担っていた発電量をカバーするためにLNG発電が増強されました。現在はLNG火力発電が最大のシェアーを占めていますが、燃料単価が国際価格の数倍もしているために貿易赤字が続いています。2015年8月から安倍政権によって性懲りもなく原発再稼動が進められています。

石炭、石油、天然ガスばかりでなく原子力も有限の地下資源を消費するので、100年程度の可採年数となります。これらは地球温暖化の原因となる二酸化炭素か放射線被爆の原因となる放射性廃棄物を生成します。二酸化炭素を固化して低温保存したり、放射性廃棄物を容器に入れて拡散を防ぐことは原理的には可能ですが、放置されているか、不十分な管理しか行われていません。これらのエネルギーは環境が利用前の状態に戻らないので「再生不可能エネルギー」になります。再生不可能エネルギーは資源枯渇と環境破壊の問題を引き起こします。これに対して「再生可能エネルギー」は環境に負荷をかけずに利用するので、太陽が今の状態を続ける数十億年間、利用し続けることができます。20世紀から深刻になってきた資源枯渇、環境破壊の問題は再生可能エネルギーによってしか回避できません。これは21世紀人の避けられない課題です。

この図から発電に使われる再生可能エネルギーの比率は10%程度であることが分かります。一方、世界全体では2011年集計で、再生可能エネルギーが発電総量の20.2%を担っています。日本の再生可能エネルギー普及率は世界平均の半分以下になります。また、日本は全ての「再生不可能エネルギー」の資源を輸入に頼っています。これに対して再生可能エネルギーは全て国産エネルギーです。従って日本のエネルギー自給率を高めるには再生可能エネルギーを普及するしかありません。このページでは再生可能エネルギーのなかで、個人でも安全に建設できる太陽光発電に絞って検討します。

世界の太陽光発電と日本のシェア

かつて太陽光発電に対する助成制度があった日本は世界一の太陽光発電の国でした。左のグラフは1998年度末の太陽光発電量の国別シェアーを表しています。日本は世界の発電量の3分の1を占めていました。

助成制度は2005年に縮小され、発電推進の勢いが弱まりました。 左のグラフは2009年度末の太陽光発電量の国別シェアーを表しています。2009年までの11年間にドイツの伸びは目覚ましく、180倍にも成長し、世界全体では52倍に増えていますが、日本は20倍にしか増えずに3位に転落しています。

その後も日本はアメリカ、イタリア中国に追い越されていきました。



左の図は2012〜2013年の太陽光発電の世界ランキングを示しています(REN21から引用)。色の濃い部分が2013年の増加分を表します。

まず2012年の到達点を見てみましょう。福島第一原発の事故の教訓で2012年にその固定価格買い取り制度を制定して日本の発電量が伸び始めました。2012年までにフランス、スペイン、イギリスなどを抜きました。日・米・中の3国が3位争いをしていました。

2013年にこの3国から中国が抜け出しイタリアを抜いて2位に入り、日本はアメリカを少しだけリードしました。



左の図は2014年末の結果です。中・日・米の伸びは目覚ましく中国がドイツを追い越すのは時間の問題となりました。日本もイタリアを追い越し3位になりました。アメリカがイタリアを抜くのは時間の問題です。



左の図は2015年末の結果です。中・日・米3国の伸びが続き、中国がドイツを、アメリカがイタリアを追い越しました。日本がドイツを抜くもの時間の問題です。



左の図は2016年末の結果です。縦軸が上の3つのグラフの半分に圧縮して表示していることに注意してください。日・独・米で2〜4位の集団を形成しています。中・日・米の伸びに差ができてきました。中国の伸びが拡大し2位以下を大きく引き離し始めました。日本がドイツを追い抜きましたが伸びが鈍くなっています。2017年の集計では中国が他をさらに大きく引き離し、アメリカがドイツと日本を追い越すと予想されます。


2017年の集計はまだです。2018年になってからREN21のサイトに表示されることを待ちましょう。


太陽光発電の課題

既にアメリカでは廃棄費用まで含めた太陽光発電の単価が1キロワット時あたり11円を達成しています。日本ではどうでしょうか。NEDOの「2030年に向けた太陽光発電ロードマップ」(PV2030)では将来の技術革新によって太陽電池単価が下がっていくシナリオを下図のように想定しています。



しかし太陽光パネルの単価が下がっても設置する土地代が高くては普及しません。原発1基分の発電を太陽光発電で行うには山手線の内側の広さが必要と言われると山手線内側の絶望的に高い土地代を想像してしまうかも知れません。日本では地価が高く、太陽光発電に向いている大きな空き地が少ないことから巨大な太陽光発電所の妨げになっています。東日本大震災の後、日本のメガソーラー建設が少し進みましたが、設置できる土地が残り少ないために2014年度以降は建設が冷え込んでしまうと予想されていました。 Wikipedia のList of photovoltaic power stationsには150メガワット 以上の太陽光発電所は世界で54箇所も挙げられています。 日本最大のものは148メガワットのユーラス六ヶ所太陽光ですがこのリストの番外です。大型の太陽光発電所建設では、砂漠などの未利用地を有している中国、米国、インド、パキスタン等が先頭集団を形成しています。中国ではすでに1000メガワット(1ギガワット)を超えています。ギガソーラーの競争で日本は脱落します。

水上設置の太陽光発電はどうでしょうか。埼玉県川島町の農業用水池に7.5MWの水上フロート式メガソーラーが設置されています。ここをクリックすると上空から見ることができます。これが現時点(2016年)で世界最大のものになります。これを洋上に大規模展開できれば敷地問題は実質的に解消しますが、浮体経費、塩害対策や送電の問題をどう克服していくか、今後の技術開発を期待したいと思います。大阪府が海水面上での太陽光発電の実験を始めています。

メガソーラーのような少数の大規模発電所ではなく多数の小規模発電所を設置する場合はどうでしょう。屋根置き太陽光発電では実質的に土地代が只になります。すでに屋根置き太陽光発電でのメガソーラーも出現していますが、小規模でも発電所が多数であることが強みです。全世帯の3割にあたる1400万戸の屋根に 3.7 kW の太陽光パネルを設置する場合は日本の全発電量の5%ほどを賄うことができます。これはメガソーラーを遥かに凌ぐ量(最小メガソーラー5万箇所分)です。


住宅用太陽光発電システムの補助金の受付件数推移(『環境ビジネス』11月1日号から転載)

しかし屋根置きの数をこれ以上大幅に増やすことはできません。上のグラフは補助金受付件数が2013年第1四半期、第2四半期とも2012年の同期と比べて減少していることを示しています。「再生不可能エネルギー」を太陽光エネルギーで置き換えるためには屋根置きを遥かに凌ぐ面積が利用できる方法を追求しなければなりません。

日本の平地の日当たりのよいところは大部分が水田または転作水田になっていますが、ここで太陽光発電を行うことは農地法の制約のために無条件ではできません。ソフトバンクが「耕作放棄地活用」を謳ってメガソーラー発電事業に参入しましたが、農地を農業目的以外に使用することは原則として禁じられていました。

後述する「ソーラーシェアリング」で土地代を事実上只にする方法が提案されています。これが全面的に利用されれば日本の総電力を賄うことができます。国土が狭く、遊休地も少ない日本にとって非常に有効な方法です。米価格の低下のために耕作を諦めていた農家にとっても米収入よりも大きい売電収入によって経営を支えられることによって耕作を再開し、放棄地が農地として生き返る力にもなることが期待されます。ソーラーシェアリングを行うには耕作の継続が条件になりますので、食料とエネルギーの「地産地消」の道が開けることになります。農林水産省もこの方法には賛成することを期待して、2012年から私もこの方法で太陽光発電事業に参入しました。2013年に農林水産省が太陽光発電と営農を両立させる「一時転用」の指針を出し、条件付で農地で太陽光発電の道が開かれました。

ソーラーシェアリングでは農地で農作物生産と同時に太陽光発電を行いますので「電気を栽培する」という表題にしました。農業と再生可能エネルギーの発展に資することをこのページの目的とします。そのために農地での太陽光発電設置の経過と出会った問題点などを紹介します。またPV2030のような技術革新がなくても、現行の太陽光パネルを使う発電設備でも、運転年数を長くすれば発電単価が低下し、火力発電や原子力発電などの「再生不可能エネルギー」よりも安価になることを実績で示すことに挑戦します。設備費を節約するために自力で発電設備を組み立てました。農業経営者は技術者でもありますのでこの問題は簡単にクリアできると思います。農地を所有する方が食料とエネルギーとの地産地消の担い手になることを期待します。

このページで紹介する発電所が稼働した翌年、2014年に「農山漁村再生可能エネルギー法」が施行され、「再生利用困難な荒廃農地」(14万ヘクタール)で太陽光発電や風力発電を実施できるようになりました。原発事故による放射能汚染農地が多い福島県の太陽光発電の量が日本一になったことは歓迎すべきことです。

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